日本初のレンタカー
もちろん左折時には前もってウィンカーを点灯するのは当たり前だが、それだけでは不十分だ。
サイドミラーで左側に何もいないのを確認したらクルマを左側に寄せてバイクがすり抜けられないようにする。
そのまま一0メートルほど走り、それから曲がるのである。
サイドが中途半端にあいていると、たいていバイクは割り込んでくる。
私も血気さかんな若いころは、自転車をパーッと追い越して左折ということをよくやったが、こいつもやめたほうがいい。
いろんな危険がそこには潜んでいる。
バイクも自転車も、ブレーキをかけたときはきわめて不安定な乗り物だ。
こんなとき、ブレーキをかけさせて下手に倒れられたらえらいことになる。
そもそも自転車に乗っている人は免許をもっていないことが多いから、クルマの常識を知らない。
もし、クルマのごく近くにバイクや自転車がいるのだったら、無理に前に行こうとせず、とりあえず前に行かせてそれから曲がったほうがいい。
まあ、一五年、二O年と運転の経験を積んだベテランドライバーなら、よくわかっていることだろう。
このあたりは左折するときはこうした要素をすべて排除してから悠々と曲がることである。
とにかく何が起きるかわからない。
自転車を追い抜きざま、あわてて左折しながら路地に入ったはいいが、そこに人がいたらどうなる。
自転車を避けられたとしても、人をひっかけることになってしまう。
これは交差点でも同じことで、左側にバイク、自転車がいないなと安心してパーッと左折したら、歩行者用信号が点滅しはじめたので、あわてて走って渡ろうとする歩行者をパーンとはねてしまうということもある。
交差点では、前しか見ず、走って渡ろうとする歩行者がきわめて危ない。
以前、私は青山の交差点で歩行者が横断するのを待って停止していたら、何を考えているのか、横から走ってきた歩行者にドーンと「側面衝突」されたことがある。
クルマが人をハネるというのは知っていたが、クルマが人にぶつけられるというのは、長年クルマを運転していて初めてであった。
かくもクルマとバイク、自転車、歩行者の感覚は違うのだ。
混合交通では、自分のクルマの周囲一メートルにはいつも危険が充満していると思っていたほうがいい。
そこのところを重々ふくんで、左折時には余裕をもってゆっくり曲がることである。
あせらずあわてず、相手が通りすぎるのを待つ片側一車線でところどころにクルマが駐車している人通りの多い商店街。
こういう狭い道にかぎって、トラックやらヴァンやらが停まって荷物の積み降ろしをしている。
電柱はある、ママチャリはヨタヨタと右往左往する、前からコンビニの配送トラックがやってくる。
運転に自信のないドライバーにとってはうんといやな状況である。
こういうところは、歩行者のぺースに合わせてゆっくり進む以外ない。
スピードを出さず、歩行者のあとにくっついて、ノロノロ進む。
先のほうで青信号が黄色に変わろうとしても、あせらず、あわてず、いずれはここを抜けるときもあるだろうと、諦観に身をまかせる。
ゆっくり走るのは老人ドライバーの特技である。
こういう状況ではあせったところで何も解決できない。
後ろにクルマが来ていることに気づかぬ主婦たちが横にならんで、クルマの前をふさぐ。
しかし、クラクションを鳴らして歩行者の四、五人がどいたからといって、べつにそのままずっとアクセルペダルを踏めるわけじゃない。
その前にまた、人が群れているのだから。
ただ、ただ人の後ろについてゆっくり行くばかりだ。
後ろにクルマが来ていることに気がついた人は避けてくれる。
でも、気がついてくれなくてもしかたない。
クラクションなど鳴らさず、後をついて行こう。
中途半端に狭い道で一方通行になっていないとなれば、すれ違いをしなければならない。
これまたつらいところだ。
こいつのコツは、むやみに左側、ギリギリに逃げながらすれ違おうとせず、むしろ道路の中央に寄せてすれ違うことだ。
道路に中央区分帯があったら、その区分帯の内側一0センチぐらいのところをゆっくり進めばいい。
運転席はたいてい右側にあるから、右側のギリギリは左側よりずっと見きわめやすい。
クルマの左側はどうしても右側よりわかりにくいので、下手に左側に寄せすぎると、放置されていた自転車などでボディをこすったり、側溝にホイールを落としてしまったりする。
どうしても自信がないという場合は無理にすれ違おうとせず、止まってしまえばいい。
自分のできる最大限、左側に寄せてクルマを止め、相手が通りすぎるのを待つのだ。
よく初心者や女性ドライバーがやるあれである。
カツコ悪いなどと思うなかれ、こういう姿勢は老人ドライバーにとっては、とても大事なことだと思う。
私は外国でもこの手をよく使う。
スコットランドでジャグァーの試乗会があったときのこと。
スコットランドの田舎道はけっこう狭く、パスなどが来ると、すれ違いがタイへンである。
試乗車を傷つけたら悪いと思うから、こいつはヤパイなと思ったら、たいてい止まってやりすごした。
ただ、この場合も無理に左に寄せすぎるとアブない。
一度、すれ違いのとき、すずきまさふみ助手席に乗っていた雑誌「NAVー」編集長(当時)、Sさんが、「Tさん、落ちます、落ちます」と悲鳴を上げるので、見れば左側に寄せすぎてもうちょっとのところで側溝に落ちそうになっていた。
商庖街など、駐車しているクルマや歩行者がたくさんいるところでのすれ違いには相当気をつかう。
対向車線にクルマが駐車しているときは、たいてい対向車がこちら側にハミ出してくる。
そうしたら相手のクルマをやりすごし、道があいてから進む。
優先順位はこちら側だなどと意地をはって無理に突っ込んでいかないことだ。
どういうわけかこういう状況にかぎって、わざわざ狭くなっているところに突っ込んできて、状況をさらにむずかしくしてしまうドライバーがいる。
すこし待って相手を通してから行けばいいのだが、ズルズルズルツと、意味もなく出てきてしまうのだ。
そして相手を困らせ、自分も困っている。
想像力が欠如しているとしかいいようがない。
ま、免許人口が七OOO万人もあれば、いろいろな人間がいるということだが、クルマの運転というのはおもしろいもので人間に妙に見栄を張らせるところがある。
私もこの歳になってもそれを捨てることができず、隣の席に妙齢の女性を乗せたりすると、ちょっと速く走ってやらないとなあ、なんて思ってしまう。
そうした心理が働いて、ついつい無意識のうちに前へ、前へと出てしまうのであろう。
しかし、少なくともすれ違いについては年齢にふさわしく理性的になったほうがいい。
すれ違いのコツは「行かせてから行け」のひと言に尽きる。
当たり前のことだが、道路というものは空いていなければ通ることはできないのだから。
なるべく広い駐車場を選ぶのが賢明だろう歳をとると、ほんとうに車庫入れは下手になる。
クルマの前後の感覚とか、ギリギリの車幅感覚が鈍くなるためなのだが、私もときどき降りて確認しないといけなくなった。
若いころは車庫入れはコーナリング以上の得意技だったのだが、まったく歳をとったものである。
きっと、私以外の多くの老人ドライバーも車庫入れは苦手なことと思う。
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